● ほんとうはすごい、まちのトコヤさん

でも、じつは理容師になるためにしっかりした専門知識と技術、経験、センスが必要。まちの床屋さんも例外ではありません。ヘアスタイルやヘアケアのアドバイスを受けると、なかなかすごいものがあります。

ところで理髪店というと、赤･白･青三色の縞模様がクルクル回るサインポ−ルでお馴染み。赤は動脈、青は静脈、白は包帯を表し、その昔、理容師が外科医を兼ねていたことの名残だとか。その伝統か、理容師になるためには医学の知識も必要です。そうした専門知識に裏付けられた上で、様々な調髪やシェ−ビング技術を身につけて、お客さんの髪質、骨格や顔立ちに会ったヘア−スタイルをセンスよく実現するのが理容師の仕事です。

イトウ理容室の理容師、伊藤義男さんも、一目見ればその人に似合う自然な髪形がイメ−ジでき、１回来たお客さんの髪質や好みは絶対に忘れることがありません。また店に入ってきた時の髪型から、その人の普段の好みも把握。このようにまちの理容店は、地域に生活するお客さん１人１人の個性や日常の好みを理解する頼もしい存在です。しかも気軽に相談すれば、ヘア−スタイルに関していろいろアドバイスももらえ、頼めば大抵のヘアファッションも演出できる、まさにプロフェッショナルでもあるのです。

祖母の勧めもあって、伊藤さんが理容師の道を歩み始めたのは４０年近く前。新宿 若松町 の人気理容店で６年間の修行生活を経て、実家でもある本町１丁目に開業したのは若干２３歳の時。町内の人たちの要望を受けての出店だったそうです。同じく地元出身で理容師でもある奥さんと二人三脚、イトウ理容室はまちの理容店として、３２年間にわたって地域の人たちの信頼を集めて営業を続けています。

今も安定的に固定客の皆さんに支えられているのですが、本町１丁目も少しずつ移り変わってきています。古くから住む人たちが郊外に転居して、その後にマンションが建設。何しろ初台、新宿に近い立地ですから、人口は漸増傾向でミドルの単身者も増えています。伊藤さんは、こうして新しくこの地域に転入してくる人たちも含めて、地域のニ−ズに応える理容店として、お店のあり方を考えています。

本町周辺地域も、高齢化は避けられません。そこで伊藤さんが力を入れる 1 つの方向は、高齢者や障害のある方への理容サ−ビスの提供。寝たきりや外出の困難な方への出張サ−ビスも視野に入れて、介護理容の実施を進めています。もう 1つは、これまで培った理容師としての専門性の発揮です。伊藤さんの目から見れば、その人の体質にあった１番自然なヘアスタイルやヘアケアの方法は一目瞭然。でも尋ねられないと、なじみのお客さんであっても余計なお世話でなかなかアドバイスは難しいもの。新しく転居してくるマンション住民も視野に入れて、気楽なコミュニケ−ションから自然に似合うヘアスタイルをアドバイスし、しかも希望に応じて多様な調髪技術の提供できるヘアサロンとして、伊藤さんはお店のあり方とそのアピ−ルの仕方を模索しています。　

理美容店というのは、意外とその人その人のこだわりがあって、行き着けのお店を変えないもの。でも転居したり、行き着け店が遠方で億劫になったりした時には、地元の理容店も一考です。利用のコツは自分のヘアスタイルについて何でも尋ねてみること。そうすればいろいろとアドバイスがもらえ、大抵は技術もしっかりしているので、納得の上で似合う髪形に。本町周辺で新しく理容店をお探しの方は、気楽にイトウ理容室に立ち寄り、アドバイスを受けてみて下さい。